「新しい日中関係を考える研究者の会」会員の皆さま、本会の活動に関心を寄せてくださっている皆さま
新しい年を迎え、本年が皆さまにとって健康で充実した一年になりますよう、心よりお祈り致します。2013年9月に発足した本会は、毛里和子初代代表幹事の下で、厳しかった当時の日中関係に意味ある一石を投じることができたと思います。昨年1月に、代表幹事を引き継ぎ、本会の活動に取り組ませていただきましたが、ちょうど「戦後70年」の大事な年でありました。
その関係で、われわれの昨年の活動もこのテーマに関するものが中心となりました。3月に日中学生会議との共催で毛里和子教授の「戦後70年と日中関係」の講演会が催されました。7月18日(土)、19日(日)は、早大の現代中国研究所、韓国学研究所、人間文化研究機構、朝日新聞主催で、本会が共催した戦後70周年記念シンポジウム「歴史の対話からどのようなアジアの未来を創造するのか」と題した国際シンポジウムを開きました。さらに11月14日(土)には、本会の総会を開催し、続いて日本中国文化交流協会との共催で「戦後70年の日中関係を考える」をテーマの研究大会を開きました。谷野作太郎元中国大使、植木千可子早大教授をお迎えし、第一部「安保篇」、第二部「歴史認識篇」を、そして第三部では本会の主要メンバーにも登壇をお願いし、パネル討論を行いました。さらに政府との関係も本会にとって大事なことであり、外務省や中国大使館の要人の方と意見交換の場を持つことができたことも報告しておきます。
この一年の会全体の活動が比較的地味であったのは、日中関係が比較的穏やかな状態になってきたこともありますが、同時にできる範囲内で頑張っていこう、継続することが重要だという幹事会の総意の下に進められたことにもよると思います。
新しい一年の大きな目標は、以下の2つです。第1は、戦後の日中関係において政界、経済界、文化界などで重要な役割を果たしてこられた何人かの方々にお声をかけさせていただき、「生き証人」として過去の日中関係の軌跡を語ってもらう講演会をシリーズとして企画すること、第2に、日中の歴史認識、歴史和解の問題をもう少し理論的実証的に整理して、会として何らかのまとめを行い、日中の関係者ならびに世に提示することであります。
習近平政権誕生前後から続いた日中の緊張した関係も、一昨年のAPEC北京首脳会議での安倍・習近平会談の実現以来、政府間対話も復活し、徐々にではありますが、関係改善の流れが鮮明になってきました。もちろん尖閣諸島をめぐる諸問題、中国各地に設置される日中戦争関連施設に見られる歴史認識問題など、相互不信、関係悪化の火種は残ったままです。しかも、これらの問題は、双方の専門家たちが率直な意見交換と相互理解の深化によって改善を図るための基盤がまだ脆弱であり、その上、しばしば政治的に利用される懸念もあります。相互の理解と信頼を基盤にした日中関係の構築にはまだまだ大きな困難が横たわっているということです。
そうした意味において日中関係を考える研究者の会は、日本、中国の研究者を中心に、幅広く政治、経済、文化、社会各方面で関係改善のために尽力されている人々との連携、協力を強め、地味ではあっても、しっかりとした日中相互理解・信頼醸成基盤の構築・強化を目指して活動を続けてまいりたいと思います。
新しいこの年が、日中関係にとりましても前向きで意義深い一年となりますように、皆さまと共に尽力していきたいと思います。引き続きのご支援と共にご教示、叱咤激励を何とぞよろしくお願い致します。
2016年元旦
幹事一同を代表して
代表幹事 天児 慧